【新フレームワーク】
第10回 CDA受講生限定コンペティション
「Aセグメントクロスオーバー」
2020年6月にカーデザインアカデミー受講生限定のデザインコンペティションを開催しました。
今回も審査を努めてくださったのは、名車フェアレディZ32のデザイナーで現在も多分野で活躍されている山下 敏男先生です。
山下先生の記事はこちらから
今回は新型コロナウィルスの影響によりメンバーが直接集まることができなかったため、フルリモートで評価会を実施しました。
これまでのコンペはこちらから|第1回|第2回|第3回|第4回|第5回|第6回|第7回
ワークショップの要素を取り入れた、新たなフレームワーク
このCDAデザインコンペティションは単なるデザインの競争ではなく、教育を目的としたイベントです。
今回は、受講生がより多くのことを学べるよう、作品制作の途中段階で山下先生のアドバイスが受けられる「中間チェック」を新たに設けました。
コンペ期間は約1ヶ月。6月1日にテーマを発表し、16日に中間チェック、そして28日に最終作品提出というタイトなスケジュールでしたが、参加した受講生たちは限られた時間の中で期待以上の作品を生み出しました。
今回のテーマは「新しいAセグメント“クロスオーバー”のデザイン」
目まぐるしく変化し続けるこの現代、その中で活躍するデザイナーになるためには常に新しい価値を見出し、そして提案できる能力が必要です。
そこで今回のテーマは “Aセグメントという制限の中で、異なるファンクションをクロスオーバーさせて新しい価値を提供する” というこれまでのコンペに比べると複雑で難しいテーマを設定しました。 受講生がどの様にファンクションをクロスオーバーさせて新しい価値の創造に挑んだのか、ぜひご覧ください。
審査の基準
- Point 「Integration(完成度の高さ)」15点
- ①テーマとコンセプトの整合性 5点
- ②アイデアの展開力 5点
- ③スケッチ表現力 5点
このコンテストでは、課題テーマとコンセプトの整合性をうまく合致させ、目的に沿ったアイデア展開をし、さらに的確かつ魅力的にスケッチで表現できているかを審査します。
厳選なる審査の結果、
最優秀賞に選ばれたのは・・・。
インドネシアの受講生
Abdulさんの作品でした!!
Abdulさんが掛け合わせたファンクションは「コンパクトカー Χ 1930年代のクラシカルなセダン・クーペ」。提案の内容は、疲れた日常を癒やす新しい通勤手段としての自動運転を備えたラグジュアリービークル。
作品名「OTTOMAN」の通り、シートの前方にオットマン(フットスツール)が設置され、リラックスした姿勢で乗車できる車内空間をデザインしています。自動運転技術のレベル5が実用化されると、車内の過ごし方はドラスティックに変わることが考えられます。この作品はその可能性の一つを示す魅力的な提案といえるでしょう。
リラックスできるインテリアとして、デザインモチーフをミッドセンチュリー家具に設定していますが、それにマッチするよう1930年代のクラシカルセダン・クーペをエクステリアのデザインモチーフに選んでいる点も、センスの良さを感じさせます。
コンセプト立案からスケッチ提案、そしてコンセプトボードのグラフィックまで非常にレベルが高く、山下先生の評価は満点でした。また、デザイン提案がエクステリアだけでなくインテリアまで及んでおり、一台の車を丸ごとデザインしている点も高評価の理由です。デザイン活動で重要な、アイデア展開やシーンスケッチ、プレゼンボードのまとめ方などすべての点でお手本となる様な作品です。
ただし、レンダリングに関してはもう少しツヤ感が欲しいところ。今後のスキル向上に期待します。
中間チェック時の作品
中間チェックの段階で既に山下先生からコンセプトとデザインの整合性については上手くバランスが取れていると評価を受けていました。ただし、ラグジュアリーな車内空間を演出するにはキャビンやボディが少し小さい点を指摘され、スタイルを崩さない程度で大きくするようにとアドバイスされていました。
スクリーンシェア機能を活用して作品にアドバイスをする山下先生
第2位は
Salimさん
「コンパクトカー Χ 農業」農業向け小型ビークルの提案。ユニークな点は既存の農業従事者ではなく、新規参入者という点です。小規模な農家のコミュニティや個人でも使用できる事を念頭に、実用的かつ魅力的なビークルを目指してデザインされています。パッケージレイアウトで前席に2名、後席は1名で片側の空いたスペースは農具用のラゲッジスペースとしている点や、短い全長で人と荷物を最大限載せることができるようキャブフォワードしたプロポーションなど、各所に工夫が凝らされています。
山下先生は、デザインが目的と合致している点を高く評価されていました。改善点は荷台の部分で、農作業に配慮した工夫(例えば、汚れた道具などを気兼ねなく積むことができるデザイン処理等)があれば更に評価は高くなっていたでしょう。
中間チェック時の作品
中間チェック時、デザインの方向性は定まっていましたがボディ面がソフトだったため、農作業用ビークルに見えない点が気になります。
第3位は
満森さん
働きながら子育てをする女性に向けたコンパクトカーで、「通勤と保育園送迎」をクロスオーバーさせるという独特なコンセプトの提案。日常使いで必要な機能を洗い出して、解決を図っている様子がスケッチからよく伝わります。山下先生からの評価では、バラエティに富んだアイデア展開が非常に高く評価されました。特に数多く描かれたシーンスケッチがデザイナーの意図を明確に表している点が秀逸でした。
一方で指摘されていたのはキースケッチの選択。選択された案よりも魅力のあるユニークなデザイン案がいくつもありました。デザイナーはアイデアを生み出す能力だけでなく、数あるアイデアから的確な選択をするスキルも鍛えなければなりません。今後満森さんがそのスキルを磨いて、魅力ある昨品を生み出すことに期待しています。
その他上位入賞作品はこちらからご覧になれます。
※クリックでスライド開始
最後に
今回のコンペで山下先生は、「Aセグメント」というサイズ的な制約と「クロスオーバーさせること」という難しい条件を組み合わせた、これまでのコンペと比べると複雑で難しいテーマを課しました。 プロのカーデザイナーは、複雑かつ困難な条件下でもデザインを提案しなければなりません。そこでは限られた範囲内で自分の提案するデザインを魅力的に表現するスキルが必要です。このコンペではその”スキル”を身につけるために、山下先生はあえて難しい課題を与えたのです。参加した受講生にとっては有益なトレーニングとなったでしょう。これまでのコンペに比べて「勉強になった」という声が多く届きました。
これからも私達カーデザインアカデミーは、受講生に必要な学びとは何かを考えて、CDAコンペを企画していきます。それでは、次回のCDAデザインコンペティションの受講生作品をお楽しみに!!
カーデザインアカデミーのコンペティションでは、中間チェックを含めた審査の様子をすべて受講生に公開しています。受講生は自分の作品に対する評価だけでなく、他の受講生への評価も知ることで、コンペで勝つためのノウハウを得ることができます。
CDAデザインコンペティション含め、カーデザインアカデミーの受講に関して何か知りたいことやご相談がありましたら、講師と直接ビデオ通話できる「個別面談」を設けていますので、ご気軽にお申し込みください。
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